LABORATORY熱の実験室


 ● 反省

 残念ながら、満足に食べられるものにはなりませんでした。現象については、実験前から予測されていたものもありますが、次のような問題があったと思います。

(1) 加熱面積が小さい
 小さいじゃがいもの場合でも、カートリッジヒーターで加熱できる面積は、じゃがいも外側の面積の、1/10以下です。そのため、同じ温度では熱が伝わりにくくなります。

(2) ヒーターからの熱伝達が悪い
 加熱開始して間もなく、ヒーターの表面に焦げた層ができます。この部分は熱を伝えにくく、また、焦げる前より体積が小さくなるので、ヒーターの周りに空間ができてしまい、ヒーターから直接熱が伝わらなくなります。

(3) 食品は熱を伝えにくい
 じゃがいもやリンゴの熱伝導率は、0.3~0.5 W/m・K 程度で、通常、カートリッジヒーターが加熱している金型の、炭素鋼:50W/m・K、アルミニウム:200W/m・K、ステンレス(オーステナイト系):15W/m・K と比較して、遥かに小さな値です。 他の食品についても、冷凍肉では 2W/m・K 程度ありますが、高い温度になると、どれも 0.5 W/m・K 以下です。
 熱伝導率 [W/m・K] の値は、1m2 の断面 積で、1mの厚さの物体の両端の温度差が、1K(ケルビン 1℃に等しい)の時に伝わる熱量 [W] ですので、これが小さいと、内部から加熱しても、外側の温度が上がりにくいことになります。

(4) 皮で保護されない
 リンゴの実験では、ヒーターの周りの水分が蒸発するために、果 汁がヒーターの方向に移動し、焼付くと同時に、甘み成分も失われているのではないかと見られる現象がありました。皮がある外側では、このようなことは起こりにくいはずです。
 
 食品を内部から焼く方法について、この実験だけであきらめるつもりはありません。問題点について解決できるような方法を考案し、再度挑戦したいと思います。

 次回は、もっと一般的な問題について実験したいと思います。