LABORATORY熱の実験室

5. 考察

 全サンプルのグラフを見てみると、サンプルによって粘度が大きく異なっていることがわかります。
まず液体ごとの粘度の差はどうして生まれるのか、粘度の高い液体と低い液体の分子運動イメージを図6に示しました。

図6 分子運動のイメージ(左:粘度が高い 右:粘度が低い)
 分子は常に運動しているため、近づいたり離れたりランダムな動きをしていますが、液体がその形を変えるとき分子同士の間で働くファンデルワールス力という相互作用によってお互いを引き合います。この相互作用は分子が大きければ大きいほど強く、また分子同士がある距離まで近づくことで最も強くなる特性を持っているため、図6のように同じ分子であっても存在する距離によって相互作用の大きさに違いが出ます。
 今回使用した物質の分子量は不明ですが、メープルシロップと醤油など大きく粘度に差のついたものの間には分子間の距離もしくは分子の大きさの違いが関係していると考えられます。

 またグラフを見ると、同じサンプルであっても、温度によって粘度が大きく異なっていることもわかります。次に同一の物質であっても温度によって粘度が変化する理由について図7で見てみましょう。

図7 熱運動による粘度低下のイメージ
 熱エネルギーを与えられた分子は活発に動き回るようになり、自然に分子間の距離が大きくなる機会が増えます。すると分子間に働いていた相互作用は小さくなり、粘度は低くなります。

6. おわりに

 今回実験で使用した液体は変化量の大小こそありましたが、温度上昇に伴い粘度が低下しているので、上記の要因から粘度の変化が起こったと考えられます。(複雑な内部構造をもつ物質はこの限りではありません)また、測定不能だったものはより高温で加熱したり、測定方法を検討することで改善する可能性もあります。
 今後は今回扱わなかった物質に挑戦したり、別な測定方法を利用して、新たな知見が得られるよう研究してみたいです。