● はじめに 現在、普通に走っている自動車は、DC12Vをシガーライターソケットなどから使うことができますが、大きな電力は使用できません。ところが、トヨタのエスティマハイブリッドは、車内に、家庭用と同じコンセントが2箇所あり、合計1500Wまで使用することができます。エスティマハイブリッドは、ガソリンエンジンと電気モーターを使用したハイブリッド車ですが、燃料電池車、42V化(バルブやエアコンコンプレッサー、ブレーキなどの駆動にも電気を使用する)などで、近い将来、すべての自動車が、車内で、現在よりはるかに大きな電力を使うことができるようになるはずです。
電気製品の中でも、熱に関するものは消費電力が大きく、車内で使用できるものは限られていました。これから、車内で使用できる電力が大きくなって、熱に関する電気製品も車の中で使用できるようになると、新たな使用形態が生まれ、それに対応した製品が必要になるかもしれません。それが何なのか、まだわかりませんが、1500Wの電力が使用できるエスティマハイブリッドを使用することで、わかってくることがあるかもしれません。そんなことで、「熱の実験室 別館-エスハイ実験室」というものをスタートすることにしました。熱の実験室の別館なので、できるだけ熱に関係するものをやりたいのですが、それほどこだわらず、実験案などを、都度集めたりしながら、寄り道・回り道で不定期連載していく予定です。
● エスハイ(エスティマハイブリッド)の紹介 これから実験をしていくエスハイ(エスティマハイブリッド)は、ボディカラーが涼しげなブルーメタリック(寒くなったらさわやかなブルーメタリック)の、標準グレードです。
■ 主要緒元
エンジンは、圧縮比が12.5と高くなっていますが、これはミラーサイクルと呼ばれる、吸気弁が遅く閉じることで、膨張比を圧縮比より高くする方式のためです。ガソリンエンジンの圧縮比は高いほど効率が上がりますが、ノッキングなどのため、むやみに高くはできません。吸気弁が遅く閉じると、圧縮行程で吸気の一部が吸気ポートに戻され、残りの吸気が圧縮されます。このエンジンの排気量は2.4Lですが、最大トルクは一般の2Lエンジンと同程度です。実質の吸気量は2L程度で、出力は低下するが効率を上げているエンジンといえます。
普通の2WDエスティマより220kgも重い、1,850kgの重量級ボディに、2L相当の出力のエンジンでは、満足な加速は期待できませんが、それを補うのが、フロントとリアにあるモーターです。エンジンと2つのモーターの出力を合計すると127kWになり、普通のエスティマの2.4Lエンジンの118kWを上回ります。重量の違いの分までは補えませんが、モーターは低い回転でもトルクがあるので、加速時に有効なはずです。
電池の容量6.5Ah (3時間率容量)というのは、6.5Aの1/3、2.17Aで3時間使用できる容量です。電圧は216Vのようですので、約470Wで3時間という計算になります。2つのモーターの出力の計31kWでは、単純に計算すると2.73分使える容量に相当します。モーターの効率、大電流では容量が低下する電池の特性、電池が通常時に満充電ではない、などからこれよりはずっと短くなるはずですが、短時間の加速では充分な容量です。
|