LABORATORY熱の実験室

4. 実験結果

下ゆで5種類×煮込み方法2種類×冷却方法2種類=全20種類の大根の写真を下表にまとめます。3cm角の大根を二等分にした断面の写真になります。
表1 大根の断面
下ゆで 電子レンジ 冷凍 温風 下処理なし
沸騰 急冷
徐冷
弱火 急冷
徐冷

※断面ではなく、外面を誤って撮影。

[下処理ごとの点数]
4人の社員が試食し、色、味、硬さについて10点満点で採点を行い、 平均点を 表及びレーダーチャートにまとめました。
色 : 大根に色が十分についているか
硬さ: 大根の硬さは硬すぎず、煮崩れしていないか、食感はどうか
味 : 大根に煮汁の味が十分に染みているか
表2 下処理ごとの平均点
下ゆで 電子レンジ 冷凍 温風 下処理なし
8.4 6.4 5.5 5.3 4.0
8.9 7.3 5.7 4.1 4.5
硬さ 8.8 7.5 3.2 1.8 4.1
[下処理による違い]
下ゆで
色:内側外側ともによく色がついていました。
硬さ:硬すぎもせず柔らかすぎもせず、ちょうど良かったです。
味:均一に味が付いており、まろやかでおいしかったです。

電子レンジ
色: 内側外側ともに色がついていました。
硬さ:少し硬めでしたので、好みにより意見が分かれました。
味:内部まで均一に味が付いており、まろやかでおいしかったです。

冷凍
色 :断面を見ると外側のみ色がついている様子でした。
硬さ:冷凍した時とはまた違う繊維質な食感と大根内部のシャキシャキとした歯ごたえが残り、漬 物に近い印象でした。
味:煮汁の味がほとんどせず大根の強い味が残っていて不評でした。

処理なし
色:大根の外側・内側共に色がついていませんでした。
硬さ:火は通っているがシャキシャキとした生の大根の食感が残っていました。
味:大根の味が強く煮物らしくないということで不評でした。

[煮込み方法ごとの点数]
 煮込み方法ごとの平均点を表とレーダーチャートにまとめました。
表3 煮込み方法ごとの平均点
沸騰 弱火
6.5 5.4
6.7 5.5
硬さ 5.3 4.9
[煮込み方法による違い]
沸騰で煮込み
色:断面を見ると外側に色が濃くついており、内側は薄い色のものが多い印象でした。
硬さ:わずかに得点は高くなりましたが、大差はありませんでした。
味:沸騰により煮汁が濃い分、味はしっかりとしていました。

弱火で煮込み
色:少し薄いが、均一に色づいている印象でした。
硬さ:わずかに得点は低くなりましたが、大差はありませんでした。
味:沸騰よりも角がなく、まろやかでまとまりのある味のものが多い印象でした。

[冷却方法ごとの点数]
 冷却方法ごとの平均点を表とレーダーチャートにまとめました。
表4 冷却方法ごとの平均点
徐冷 急冷
5.6 6.2
5.8 6.4
硬さ 4.8 5.3
[冷却方法による違い]
急冷
色:わずかに得点は高くなりましたが、大差はありませんでした。
硬さ:大差はありませんでしたが、硬いという意見が少し多かったです。
味:わずかに得点は高くなりましたが、大差はありませんでした。

弱火で煮込み
色:わずかに得点は低くなりましたが、大差はありませんでした。
硬さ:大差はありませんでしたが、柔かいという意見が少し多かったです。
味:わずかに得点は低くなりましたが、大差はありませんでした。

5. まとめ

【下処理】
下茹で・電子レンジの下処理を行った場合、下処理なしと比較し、硬さはもちろんのこと、色の付き方が濃く、大根特有の苦みのない美味しい煮物に仕上がりました。このことから、下処理は煮物調理には欠かせないことを再確認することができました。
また下処理の方法によって仕上がりに大きな差が出ました。やはり下処理の王道である「下茹で」が一番美味しく仕上がり、次点で「電子レンジ」が高得点となりました。「冷凍」は、細胞壁が壊れよく味が染み込むのではないかと予想しましたが、細胞壁が壊れたからなのか食感がブヨブヨし煮物らしさが損なわれてしまいました。また変わり種の「温風加熱」も冷凍と同様、煮物らしい食感ではありませんでした。「冷凍」「温風加熱」共に、食感が漬物や切り干し大根等に近いと感じました。もしかするとそういった食材の代わりに使ってみても良いかもしれません。
【煮込み方法】
弱火の方がやや得点が低くなりましたが、今回の実験は全体的に下処理・煮込む時間が短めでした。もう少し煮込む時間が長ければ、煮崩れや味の違いが顕著に出てくるかもしれません。
【冷却】
徐冷の方が全体的にやや得点が高くなりましたが大きな差は見られませんでした。普段煮物をつくる際には、お好きな方法で粗熱を取って良いと思います。(もしかすると、徐冷の方がややおいしく仕上がるかもしれません・・・)

6. 最後に

 煮物をはじめ、味の感じ方は個人の好みにより大きく左右されます。今回の実験では、硬さの評価が審査員によって分かれました。加熱時間を調整し好みの食感にすることで、それぞれがより美味しいと感じる煮物に近づけるかもしれません。また下処理や煮方を変えると、味だけでなく調理に必要な手間や時間も変わります。皆さんのライフスタイルに合った煮物のレシピと出会えることを願っています。

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