LABORATORY熱の実験室

 
熱の実験室-新館
第29回 PID制御による温度コントロール
~安定した温度制御を目指して・ホットプレートDEMO (LS15P)編~
5ブロックの実験メンバーが交代で担当します
実験実施: 2013年9月、 実験担当: 第2ブロック

 1. はじめに

 ホットプレートをはじめとするヒーターの温度コントロール方法の一つにPID制御による温度コントロールがあります。PID制御にかかわるパラメーター、P(比例帯)、I(積分時間)、D(微分時間)を最適な値に設定することで、安定した温度制御(オーバーシュートをしない、温度がふらつかない、目標温度への収束)が短い時間で可能となります。最適値を求めるためには多くの経験や知識が必要となりますが、現在は温度調節計のほとんどに簡単に最適値を求めることが可能なオートチューニング機能がついています。しかし、オートチューニングを用いても装置や環境によっては最適値を求められず、人の手による修正が必要な場合があります。
 今回は「人の手による修正」に着目し、ホットプレートDEMO (LS15P)を用いて、より短い時間で安定した温度制御を目指して実験を行いました。

 2. 実験方法

 ホットプレートDEMO (LS15P)を用いて、通電開始から設定温度で温度が安定するまでの温度の推移をパソコンでモニターしました。PID制御をする際のパラメーターをオートチューニングにより求めた値を基準に各パラメーターのうち1つを小さくまたは大きくして実験、比較を行いました。実験は制御方式がPID制御の場合だけではなく、比較としてON/OFF制御の場合でも行いました。
■実験条件
  ●設定温度: 200℃
  ●制御方式・パラメーター
条件1. ON/OFF制御 条件2. PID制御(パラメーターはオートチューニングによる)
条件3. PID制御(Pを小さく) 条件4. PID制御(Pを大きく)
条件5. PID制御(Iを小さく) 条件6. PID制御(Iを大きく)
条件7. PID制御(Dを小さく) 条件8. PID制御(Dを大きく)

 3. 実験結果

  3.1 ON/OFF制御とPID制御の比較

 図2に条件1、条件2による200℃までの温度の推移をまとめました。
P [%] I [s] D [s]
条件1 - - -
条件2 3.4 228 57
図2 ON/OFF制御とPID制御の比較
 
 ON/OFF制御である条件1の場合、+24℃オーバーシュートしたのに対し、PID制御の条件2の場合、+5℃のオーバーシュートとなり、約900秒後に温度が収束しました。このように最高使用温度が400 ℃であるホットプレートDEMO (LS15P)の場合、最高使用温度に対して目標温度を低く設定すると、電力が過剰となってしまい、ON/OFF制御では大きくオーバーシュートをしてしまいます。
 今回の実験ではこのオーバーシュートを極力小さくし、より短い時間で温度が収束するようにP、I、Dの各値を個別に変更し、温度の推移を条件2と比較します。

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