LABORATORY熱の実験室

 ● 測定結果全体

 2種類の表面状態(A:シリコーンゴム、B:アルミ)で、制御温度を4段階(50℃、80℃、110℃、140℃)に変化させた結果は、次の通りです。なお、消費電力は約60Wと0Wを繰り返していて読み取れないので、5分間の移動平均をグラフに加えました。
A:シリコーンゴム

B:アルミ

制御温度
 表面温度が高いほど、ヒーターの消費電力が大きくなります。

表面状態
 同じ温度でも、表面がA:シリコーンゴムよりB:アルミの方が消費電力が小さくなります。これは、アルミの方がはるかに放射率が小さく、同じ温度でも電磁波として放出するエナルギーが小さいためです。実際、加熱中のシリコーンゴムに手を近づけると暖かく感じますが、アルミではほとんど暖かさを感じません。熱の実験室-新館 第4回 で、熱伝導が悪い樹脂バケツと、熱伝導が良い金属バケツの、放熱に違いがなかったのも、放射率の違いがその理由でした。

 制御センサーとTC1(上側)に比べ、TC2(下側)は温度が低く、特にB:アルミは差が大きくなっています。これは、下側の方が、自然対流熱伝達率が大きくなるためです。ヒーターからの放熱には、放射と自然対流がありますが、アルミは放射による放熱がわずかなので、自然対流による放熱しやすさ(自然対流熱伝達率)の影響が大きくなっています。

 ● A:シリコーンゴムとB:アルミの比較

 各制御温度で安定した状態の、制御用センサー/TC1(上側)/TC2(下側)、3点の平均温度と、消費電力をまとめると、次のようになりました。

制御温度
[℃]
A:シリコーンゴム B:アルミ
平均温度[℃] 消費電力[W] 平均温度[℃] 消費電力[W]
50 50.7 11.0 48.8 7.1
80 79.1 20.6 76.4 16.5
110 106.0 35.7 103.6 23.0
140 131.8 47.2 130.9 31.3


 温度が高いほど、消費電力が大きくなります。
 B:アルミと比べ、A:シリコーンゴムは、温度が高くなるほど消費電力が大きくなる度合いが高くなります。自然対流による放熱は、表面温度と空気の温度差に比例しますが、放射による放熱は、絶対温度の4乗に比例します。放射率が高いシリコーンゴムは、放射による放熱が大きい(放射率が高い)ためです。

 ● まとめ

 温度だけでなく、表面状態も消費電力に大きく影響することがわかりました。

 今回のような簡単な実験でも、普通にやろうとすると、温度測定器や電圧計、電流計などが必要で、しかも、それらの測定値を全てデータロガーで記録するには、更に変換器なども必要になります。ログサーモを使うことで、簡単に実験することができました。

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