LABORATORY熱の実験室

 

元祖 [熱の実験室] 第34回 - トンネルの温度測定-国道19号

「熱の実験室」のコーナーでは、熱を利用した身近な実験を行なっています。

第34回(2019年12月)の実験
 トンネルの中は、外より温度が変化しにくいため、夏は外より涼しく、冬は外より暖かくなります。実際に、冬のトンネル内の温度はどうなのか、Raspberry Pi Zero W を使ったデータロガーで、車で走行しながら測定しました。

 ● トンネル内の温度測定をはじめた理由

 新潟県の、上越市から糸魚川市の海沿いに、線路跡を利用した「久比岐自転車道」があります。ここは、旧国鉄のトンネルもそのまま利用してあり、真夏にトンネル内に入ると、すごい温度差です。このトンネル内を、自転車で走行しながら温度測定してみたいと思いました。
 自転車で温度測定する場合、温度センサーだけでなく、データロガーも測定雰囲気になります。熱電対で測定する場合は、測温接点と端子台の温度差による熱起電力を測定し、別に端子台の温度を測定しますが(第32回を参照)、急な温度変化があると、この部分に温度差が生じて正確に温度測定できません。温度で電気抵抗が変化するサーミスタを温度センサーに使用すると、このような問題はありませんが、自転車で測定できる、サーミスタを使用するデータロガーを作成する前に、夏の時期を逃してしまいました。
 そこで、まずは、初冬の国道19号線のトンネルを、車で測定してみることにしました。

 ● データロガーの仕様

  • コンピューター: Raspberry Pi Zero W
  • センサー入力: CDS(照度センサー) × 1 + サーミスタ × 2
  • 記録: 照度、温度
 Raspberry Pi Zero Wは、65 × 30mm と小さく、処理能力はカードサイズの Raspberry Pi よりかなり劣りますが、省電力です。HDMI OFFなど省電力設定をすると、測定していないときに 0.07A、測定時に0.12~0.15A 程度になりました。
 トンネル内に入ったことを照度で判別するために、CDS(照度センサー)を取り付けました。写真の右に飛び出た丸いものです。CDSは、暗いと電気抵抗が大きく、明るいと電気抵抗が小さくなります。測定値は目安として、温度と同じ数値範囲におさまる値に計算して記録します。
 サーミスタは、低温では電気抵抗が大きく、高温では電気抵抗が小さくなる温度センサーです。
 測定回路の基板は 70 × 50mm で Pi Zeroより大きいので、通常とは逆向き、Pi Zero の下側に GPIO と接続しています。
 LANがない環境でも使用できるよう、登録したWi-Fiアクセスポイントがある場合はそこに接続し、ない場合は、Pi Zero がWi-Fiアクセスポイントになって、スマートフォンなどから接続できるようにています。
 データロガーの操作は、Pi ZeroのWebサーバー(Apache)に、Wi-Fiで接続したスマートフォンなどから、Webブラウザで接続して行います。

 ● 実験の構成

 データロガーと電源(モバイルバッテリー)を、寸法を合わせて作成した厚紙の箱に入れました。Pi Zero にUSBケーブルで電源供給しています。Pi Zeroは省電力なので、このモバイルバッテリーで10時間程度は稼働できるはずです。
 これを車の後部座席に置き、サーミスタを右後ろのドアから出しました。
  • サーミスタ
     チップをガラス封止した素子に、平行電線を接続しています。温度変化による応答を良くするため、ガラス素子が直接外気に触れる構造にしています。
  • 上側
     ドアの上部にはさんでいます。速度が遅いと、車内の温度により、ウインドウガラスからの熱の影響が多少あるかもしれません。
  • 下側
     0.3mの位置からぶら下がっているので、サーミスタ素子の位置は、0.25mくらいになります。エンジンから床下を流れる熱の影響が多少あるかもしれません。
 走行した軌跡(GPS情報)は、iOSのアプリ「MyTracks」を使用して、5秒間隔で記録しました。

サーミスタ
ガラス素子を露出

上側
地上から 1.3m

下側
地上から 0.3m

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