LABORATORY熱の実験室


 ● 結果の検討

 まあ、成功と言って良いかと思います。
 熱気球は、温度上昇で膨張した空気による浮力で上がるわけですが、そのときの状態がどうだったのかを検討してみました。
 簡易的に、球体を直径2mの球とします。そうすると、球体の体積:4.19m3、球体の表面積:12.6m2になります。
 まず、浮力と温度の関係を考えます。
 気温が20℃のとき、球体内の空気の平均温度と浮力の関係は、上のグラフのようになります。屋内の確認では、球体の重量250gを含めて浮力は約450g(4.4N)でしたので、球体内の平均温度は約50℃だったことがわかります。屋外では、風で球体が変形して体積が変動しますので、空気の出入りがあって、もう少し低い温度になってしまうはずです。
 浮かび上がった球体は外気で冷却され、浮力がその重さ+釣り糸の重さより小さくなると落ちてしまいます。釣り糸は0.15g/mくらいですので、50mでは7.5gで大きな影響はありません。
 球体内の温度が50℃のときの放熱を、Q&Aキットの [放熱-熱通過] で計算してみます。
 この場合の壁はポリエチレンシートで、厚さは0.02mmです。熱伝達率CとEを一般的な値にした計算で、WELDY PLUSのワット数1300Wとほぼ同じ熱通過量になりましたので、浮力から推定した球体内の平均温度50℃は、だいたい合っていると考えられます。

 ● 球体の大きさについて

 上の推定がだいたい合っているとして、球体の大きさについての影響を計算してみました。同じ素材で作られた球体なら、重量は表面積に比例しますから、直径の2乗に比例します。体積は直径の3乗に比例します。この関係から、上と同じ放熱量(約1300W)となる球体内部温度を計算し、そこから浮力を計算したのが次のグラフです。
 浮力というのは、内部の空気が浮く力です。浮力から球体重量分の力を引いたのが実浮力です。球体を大きくすると浮力が大きくなるものの、重くなるので実浮力が低下します。直径4mの球体ではマイナスになって、浮くことができなくなります。また、直径1mでは内部の空気が140℃になってしまい、ポリエチレンシートでは持ちません。実浮力が最大になる1.8~2.4mくらいが適正サイズと言えます。

 ● ヒーター付きの熱気球は可能か?

 実は、はじめに考えたのは、熱気球にヒーターを付けて、下から長い電線で電力を供給するものです。今回上げた熱気球は冷めると落ちてしまいますが、ヒーターが付いていれば、浮き続けることができます。
 細めの0.75mm2の電線を使用するとして、その重量は銅の導体だけで6.7g/mで、絶縁被覆を含めると11g/m程度になります。2本必要ですので、2倍の22g/mです。今回の熱気球は200gしか持ち上げることができませんが、ヒーターをごく軽く100gで製作できたとして、残りの100gでは、4.5mでいっぱいになってしまいます。これはかなり寂しい高さです。ということで、下から電力を供給するタイプの熱気球は計算上不可能、ということになります。