LABORATORY熱の実験室


熱の実験室 別館
エスハイ実験室 第21回

 エスティマハイブリッド(エスハイ)を使った実験室 

 ● 今回のテーマ(熱気球を上げたい-上がった編)

 エスハイの100V電源を使用して熱気球を上げる。これを実行することにしました。

熱気球を上げた場所で

 ● ヒーターの検討

 熱気球の球体が膨らんだ後の加熱では、熱風ではなく、ヒーターだけで内部の空気を加熱すれば、余分な熱風流出によるロスがなくて良いはずです。ところが、ヒーターを普通に球体の下から入れると、ヒーターの放射熱で球体のポリエチレンシートは高温になって融けてしまいます。
 そこで、ヒーターの周りをアルミの反射板で囲い、放射熱を遮断して自然対流で加熱できるようにしたヒーターを製作しました。


反射板で囲んだ
 耐食耐熱超合金のNCF800をシースに使用したカートリッジヒーターを、渦巻き状のアルミ板で囲ってあります。渦巻状にしたのは、直接ヒーターからの放射熱を受けるアルミ板の外側に空気層を設け、もう一枚アルミ板を設けることにより、外表面の温度を低下させるためです。ヒーターの温度は軽く1000℃を超えていますが、外側のアルミ板は手でさわれる温度になっています。
 製作したヒーターは、主に自然対流で空気を加熱しますが、1000℃近くの空気が上から出てきます。出た空気は、周りの空気と混ざり徐々に温度が下がっていきますが、ポリエチレンシートが融けない温度まで下がるのは、大分上の方になります。
 風がない状態で、膨らんだ後の熱気球を加熱するには良いのですが、まず膨らますのが困難です。そして、ポリエチレンシートが上の空気出口に近付くと、あっという間に融けてしまうはずです。別のホットエアーガンで膨らましてから、このヒーターに切り替える方法もありますが、エスハイの電源で2つを同時には使用できないので、ホットエアーガンをOFFにしてから、このヒーターをONにして加熱するまでの間に気球は縮んでしまうことになり、うまくいきそうもありません。

 ● WELDY PLUSを使うことにした

 気球を膨らますときは、ポリエチレンシートが融けない程度の熱風を出し、膨らんでからは高温で加熱して浮力を大きくする、というのを、1台のヒーターでやる必要があることがわかってきました。そしてピッタリのものがあることに気が付きました。それは「WELDY PLUS」です。
WELDY PLUS
(ウェルディ プラス)

■型番:PLUS-03
■100V 1300W
■温度範囲:80~650℃
■重量:620g
■風量:200~550リットル/分

 この製品の詳しいことは、
こちら の製品情報をご覧ください。
 WELDY PLUSは、デジタル表示のディスプレーがあって、風量は5段階に、温度は5℃間隔で設定できます。まず、風量最大で、ポリエチレンシートを融かす心配がない温度の熱風で膨らまし、ある程度膨らんで、球体内に空間ができてきたら温度を上げていき、最後は風量を落として最高温度にして浮力を増すことができるはずです。ワット数も、エスハイの100V電源の使用可能な1500Wに近い、1300Wで適当です。
 このWELY PLUSを使用して、屋内で膨らませてみました。球体の方は、前回の「球体製作編」では、熱風入り口付近だけは耐熱性の材料にする必要がある、と書きましたが、ポリエチレンシートが融けない温度の熱風を出すことができますので、融かしてしまった部分だけ修理して、材質はそのままにしました。
 まず、風量最大で、150℃に温度設定して球体に熱風を入れます。ポリエチレンシートを融かす心配はありません。この温度では、球体は寝そべった状態から起き上がることはありませんので、温度を上げていき、最後は風量を落として600℃くらいになるようにしました。前回は、やっと立ち上がったという状態でしたが、WELDY PLUSを使用した今回は浮力も大きくなり、約200gの重りと釣り合うことができました。球体が約250gですので、約450g(4.4N)の浮力を持っていることになります。