![]() ● 温泉の地元で沸点の測定 それほど涼しくはなかったけれど、まあまあ快適だった高原から、暑い下界に下りてきました。測定場所は、笹屋ホテルのある、温泉の湯の地元、戸倉町です。下のような山腹の、戸倉上山田温泉か、ハリウッドか、という特徴的な文字看板が見える場所です。
私は、地元出身じゃないんでわかりませんが、この「戸倉上山田(温泉マーク)」、若い頃は格好悪い!とか、恥ずかしい!とか思っていても、しばらく地元を離れていて、帰ってくるとき電車や車の窓から見えてくると、懐かしいもののようです。夜になると、色が変わっていくイルミネーションで、更に派手な外観になります。
このときの、長野測候所(標高:418m、標高0mに換算した値)の気圧は1005hPaでしたので、換算して965hPa程度と推定します。気温は約33℃です。
高原より標高が低くて気圧が高いので、沸点が高原より高いのはわかりますが、温泉の湯と純水の温度差が、高原では0.3℃だったのが、0.8℃になっています。これは、測定のバラツキ程度の違いではなく、データレコーダーのチャート紙で見ても、温泉水と純水の温度差は全然違っています。温度センサーまたはデータレコーダーの異常でないことを確認するために、左右のセンサーを入れ替えて確認しても(峰の原高原でも確認しています)、同様でしたので、確かに温度差が違うようです。
● もう一回測定してみたら 「峰の原高原」と「戸倉町」の結果の違い、温泉の湯と純水の温度差が、0.3℃と0.8℃という違いは、後で考えても原因がわかりません。戸倉上山田温泉の泉質は「単純硫黄泉」というものですが、温泉の湯1kg中の成分は0.5~0.6gです。ところで、純粋な水より何らかの成分を含む水の沸点が上昇するのは、「モル沸点上昇」というもので、モル濃度(1kgの水に何モル溶けているか)に比例します。水の場合には、次のようになります。
この式から、0.8℃沸点が上昇するには、1.54モル溶けていることになりますが、最も原子量が小さい水素でさえ、1モルで1gですから、0.5~0.6gで1.54モルあるということはあり得ません。また、0.3℃の沸点上昇でさえ、モル沸点上昇の式からは大きすぎることがわかります。
何だかわからないので、次の日に、もう一回測定してみることにしました。なお、温泉の湯、純水ともに、冷蔵庫に保管してあった5℃以下のものを、フラスコに入れた直後に加熱しています。結果は次のようになりました。
なんと、温泉の湯の沸点の方が低くなってしまいました。この時間の、長野測候所(標高:418m、標高0mに換算した値)の気圧は1009hPaで、一回目より少し高くなっていますが、この影響(0.1℃程度)以上に、純水の沸点は上昇しています。温泉の湯は気圧上昇したのに0.6℃下がってしまいました。
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