実験実施:2026年9月 実験担当:チームイエロー
1.はじめに
八光電機の本社のある長野県は、冬にはマイナス20度を下回るような地域もあり、屋外で使うものを中心に寒冷地対策が必要になります。
「電線」も寒冷地では注意する必要があるものの一つです。電線の被覆が冷えると硬化し、曲げ、衝撃、内部・外部応力に耐え切れずに、ひび割れてしまうことがあります。特にゴムはガラス転移点が高く、低温で脆化する種類が多いです。
さて、「熱電対」には、金属さや管に囲まれた「シース熱電対」と、金属などの保護管を使用せず素線と被覆だけでできていて先端を溶接させて作る「素線型熱電対(デュープレックスタイプ、被覆熱電対)」があります。
熱電対の寒冷地での耐性はどうなっているでしょうか?気になったので調査してみました。
1.1.シース熱電対の場合の耐寒性
シース自体に耐寒温度はありませんが、熱電対には種類ごとに公差クラスがあり、低温側にこの範囲以下になると、熱電対の不均質誤差によりかなり大きな誤差が発生することがあります。
K熱電対の場合、汎用に販売されている「クラス2」ではマイナス40℃が公差範囲になるため、これを下回る温度を測定する場合はクラス3の熱電対を使用します。
シースから計器側には「補償導線」という専用の導線を使用しますが、補償導線の被覆の耐寒温度はカタログにスペックが載っています。
また、補償接点(熱電対と補償導線を接続している部分。通常はスリーブと呼ばれる太くなっている金属部分の中にある。)には「補償接点温度」の温度範囲があります。これを超えると正常に温度が測定できない場合があります。
以上まとめると、シース熱電対の使用温度範囲の低温側は、①シース熱電対の公差クラス、②補償導線の被覆耐寒温度、③補償接点の温度範囲により制限を受けることになります。
参考:熱電対について 補償導線
参考:補償導線のPDFカタログ(被覆の耐寒温度、補償接点の温度範囲を記載)
1.2.素線型熱電対(デュープレックスタイプ、被覆熱電対)の耐寒性
素線型熱電対は、シース熱電対と比較すると素線、被覆、端子だけでできているためシンプルですが、耐寒温度が公開されていないものがあります。耐寒温度が不明な「素線型熱電対」を冷やすとどうなるのか?気になったので確認することにしました。
2.実験内容
2.1.製作したサンプル
以下の「素線型熱電対」を製作します。また、各長さは1mとしました。
シリコーンゴム、フッ素樹脂(FEP)は耐寒温度は公開されています。ガラス編組は耐寒温度が不明です。
| 種類 | 写真 | 被覆の温度範囲 |
| シリコーンゴム被覆熱電対 | ![]() | -60℃~180℃ |
| フッ素樹脂(FEP K-6F) | ![]() | -80℃~210℃ |
| ガラス編組 | ![]() | 不明~200℃ |
| ガラス編組+SUS外シールド | ![]() | 不明~200℃ |
なお、素線型熱電対は補償導線で延長することはあまりなく、直接計測機器に接続することが多いと思います。公差クラスはシース熱電対と同じですので省略しますが、マイナス40℃までは公差範囲内です。そのため、冷却した際の被覆の評価をしていきます。
2.2.実験方法
作成した4種類の熱電対を恒温室に入れて冷やします。以下の4条件で、外観、電気的特性(絶縁抵抗値)、昇温動作での温度測定に異常がないか確認します。
条件①-15℃到達後、1時間保持
条件②-25℃到達後、1時間保持
条件③-35℃到達後、1時間保持
条件④常温⇒-35℃到達後1時間保持を4サイクル
3.実験結果
各条件の外観を表2にまとめます。
| シリコーンゴム | フッ素樹脂FEP | ガラス編組 | ガラスSUSシールド | |
| 条件① -15℃到達後 1時間保持 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
| 条件② -25℃到達後 1時間保持 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
| 条件③ -35℃到達後 1時間保持 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
| 条件④ -35℃到達後 1時間保持 4サイクル | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
いずれの熱電対にも外観上の変化は見られません。少し曲げてみましたが、問題なさそうです。
また、絶縁抵抗値、温度測定ともすべての条件で正常で、問題なく使用できると思います。
4.結果
耐寒温度が不明だったガラス編組、ガラス編組SUSシールドともに、寒冷下のサイクル試験で異常がありませんでした。静止状態では問題なく使えると思いますが、カタログに耐寒温度の記載があるシリコーンゴム被覆やフッ素樹脂被覆を使うほうが無難だと思います。
また、静止状態では問題ありませんでしたが、どんな材質でも低温では少なからず硬化・脆化するため、可動する場合や小さな曲げRで曲げる場合は、仕様温度範囲内であっても注意が必要です。
冷凍機やドライアイス、液体窒素、液体ヘリウムなど、極低温で使用する場合にはクラス3熱電対をご使用し、スリーブより電線側は冷えすぎないように注意してください。




















