第1回 温調付ヒーター |
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登場人物 | |||
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近山: | 大変だー (「ドドドタン ドアをあけてとびこんで来る」) |
大松: | 近山君どうしたの?? そんなに興奮して。。 |
近山: | 温調付ヒーターなのに真っ赤になったと、怒っているひとがいるんですよ。 |
大松: | 怒って真っ赤になっているひとをみて~~ ヒーターが真っ赤に~~。。。 |
近山: | のんびり変なことを言ってないでくださいよ。30分も怒られたんですから。 |
大松: | まあまあ、落ち着いて、どういうことなのか話してみなさい。真っ赤というのは、ペンキを塗ったわけではなくて、ヒーターの温度が上がって赤熱した※1 ということだよね。 |
近山: | 40℃に設定した温調付ヒーターを容器に入れてから、水を入れようとしたところ、ヒーターが真っ赤になっていたということなんです。40℃に設定してあるのに、何で真っ赤になるんだ あわてて電気を切ったけれど、火事にでもなったらどうしてくれるんだ と言われたんです。 |
大松: | ということは、水を入れる前に電気を流していたと、、、 |
近山: | だって、ヒーターを入れて、水を入れて、またヒーターに電気を流して、、というのは面倒ですからね。ヒーターには温調器が付いているから、どっちが先でもかまわないんじゃないですか? |
大松: | 温調付ヒーターというのは、水の温度をコントロールするための温調器が付いてるんですよ。ヒーターの温度をコントロールしているわけではないんですよ。 |
近山: | ヒーターと水は温度が違うんですか? |
大松: | 水の温度が低いときでも、ヒーターの温度は100℃近くまで上がっているし、水が沸騰して100℃になっても、110℃までは上がっていないだろうね。ヒーターの温度をコントロールしているわけじゃないから、水がないのに電気を流せば、温度が上がりすぎて赤くなるのは当然なんですよ。 |
近山: | え~、そうなんですか~、、早く言ってくださいよ。不良品で、温調器がはたらかなかったんだろう と言われて、29分くらいあやまりっぱなしだったんですから。 |
大松: | いつも大袈裟だなあ。まあ、いい機会だから、少し説明しよう。 |
※1:物体の表面からは、持っているエネルギーが電磁波として放出されていて、その大きさと波長は温度によって変化します。温度が低いと、波長が長くて目に見えない赤外線しか出ていませんが、温度が上がるほど短い波長も出るようになり、600℃くらいまで上がると、多少赤く見えるようになります。赤熱して見えるのは、700℃以上になっているはずです。 |
大松: | これは、水用ヒーターで温度調節する場合の配置ですが、サーモスタットの感熱部は、ヒーターの発熱部とは離れています。 |
近山: | サーモスタットの感熱部がヒーターにくっついていると、水の温度が上がる前に、ヒーターの温度が※2 サーモスタットに伝わって、オフになってしまいますからね。 |
大松: | その通り!!よくわかったね。 |
近山: | 僕はいつも冷静に考えるのが取り柄ですから(汗汗)。 |
大松: | サーモスタットの感熱部には、水の温度が良く伝わり、ヒーターの温度が伝わりにくい方が、水の温度を正確にコントロールできる、ということなんだ。 |
※2:水の温度が低くても、ヒーターの表面温度は沸点(100℃)近くまで上がっています。 |
大松: | 水がなかったらどうだろう? |
近山: | お客さんからのはなしでは、ヒーターは赤熱するくらい温度が上がりました。 |
大松: | 水用ヒーターはワット密度※3 が高いので、水がないと急激に温度が上がります。ところが、サーモスタットへは熱が伝わりにくいので、サーモスタットの温度はゆっくりしか上がりません。サーモスタットが動作する温度になるころは、ヒーターは700℃以上になっているでしょう。 |
近山: | でも、ここでサーモスタットが動作してオフになれば、とりあえず事故などになっていなければ、めでたし‐めでたし ということですね。 |
大松: | そうは問屋がおろし金。。ダイコンすりすり。。その1 サーモスタットがオフになっても、温度が下がれば、またオンになってヒーターの温度が上がります。 |
近山: | あ、そうか! ダメですね。 |
大松: | その2 サーモスタットはもうこわれているんです。1回目にサーモスタットがオフになってヒーターの温度が下がり始めても、サーモスタットへは熱が伝わりにくいので、温度がゆっくり上昇していきます。そしてサーモスタットの耐熱温度をはるかに超えてしまいます。そのあと何回かオン-オフするかもしれません。運良くこわれてオフのまま、ということもあるかもしれませんが、期待はできませんよ。 |
近山: | それじゃあ、安全性という面では、温調付というのは役に立たない、ということですか? |
大松: | はじめから水がない状態で電気を流したようなときは、確かにほとんど役に立たないかもしれません。でも、実際に水がない状態になるのは、はじめから水を入れないんじゃなくて、途中で忘れたりして、水が蒸発してなくなってしまうのが原因のほとんどだと思います。水の蒸発は、沸騰すると速いですが、温調付ヒーターで温調していれば、沸点まで温度が上がらないので、蒸発はゆっくりになります。 |
近山: | 危険な状態になりにくい、ということですね。 |
大松: | 八光の、小型の温調付ヒーターは、85℃までの温調器が付いていますが、これは沸騰して水が速く減少することがないように、ということなんですよ。 |
近山: | そういうことですか。実は、何で120℃までの温調器が付いていないんだ、とお客さんから言われたことがありました。ムニャムニャ言ってごまかしましたが(笑)。。。 |
大松: | まったく、せっかく色々考えて作っているのに、わかってくれていないなんて悲しいね。それじゃあ次に、温度過昇防止や異常温度なんかについても、ついでに説明しよう。 |
近山: | ちょ、ちょっと待ってください。さっきの怒っていたお客さんのところにもう一回行って、説明してきます。 |
大松: | まあまあ、あわてないで 温度過昇防止や異常温度についても知っていた方が説明、、、 |
近山: | 行ってきま~す。(「もうドアに手をかけている」) |
大松: | 。。。 |
※3:ふつうは、ヒーター発熱部の表面積1cm2当りのワット数をいいます。水用ヒーターでは7~10W/cm2くらいです。 |
登場人物は架空のものです。 |
次回につづく・・・ |