LABORATORY熱の実験室

実験3
 湯煎の場合、寸胴鍋側面からの放熱がないのに対し、投込みヒーター(実験2)では、とくに断熱材なども施さなかったため、寸胴鍋側面からの熱ロスがあったと考えられます。実験2終了後の液温を元に計算すると、寸胴鍋側面からは約110W、液面からは約80Wの熱が放熱されていたことになります。液面からの放熱は各実験で同じと仮定した場合、鍋側面からの放熱を抑えてやれば、投込みヒーターによる加熱でも加熱時間の短縮になると考えました。そこで鍋の側面に断熱材を巻き、投込みヒーター(フィン有り)で再度、実験してみました。


寸胴鍋に断熱材を巻きました

10分経過

30分経過

1時間経過

2時間経過

3時間15分後、実験終了

 実験の様子を眺めていると、断熱材無しのときよりも溶けるペースが早いような気がしましたが、結果的にはあまり変わらず、3時間15分でパラフィンワックスは溶けました。断熱材を巻いて鍋側面からの放熱を抑えていたはずでしたが、予想したほど加熱時間の短縮にはつながりませんでした。今回の実験では行いませんでしたが、さらに加熱時間を早めるには、攪拌して強制対流をおこしたりパラフィンワックスの塊を突っついて穴をあけたりする方が有効ではないかと思います。

 3. 考察

 湯煎による加熱では、投込みヒーターよりも早くパラフィンワックスを溶かすことができましたが、使用したヒーターの消費電力が異なるため、一概に湯煎の方が有利というわけではなさそうです。250Wのヒーターで湯煎をしたとすると、消費電力が1/4になるので、単純計算でその分時間が4倍、つまり溶けるのに4時間かかると考えられます。時間さえ気にしないのであれば、ヒーターで加熱した方が若干節電になりそうです。さらに寸胴鍋に断熱材などを巻けば、わずかながらですが時間短縮でき省エネ効果が得られます。
 一方、ヒーターのフィン有り、無しを比較すると、加熱時間に1時間も差が生じました。フィンを付けたからと言って発熱量が増えるということはありませんし、消費電力は同じなのに、なぜフィンの有無でこのように差ができるのでしょうか。
 要因としては、(1)フィンを付けたことで熱の移動が(フィン無し比べ)効率よく行われたこと、(2)フィンを付けて質量が増し、ヒーターの熱と荷重によってパラフィンワックスの塊が溶けやすくなったこと、(3)ヒーターとパラフィンワックスとの接触部の形状の違いなどが考えられます。要因(1)については詳しい計測をしていませんのではっきりしたことは言えませんが、実験を観察していると、鋭利なフィンの先端がヒーターの荷重で食い込みながらパラフィンワックスを溶かしているように見えたので、この要因(2)(3)が今回のフィン有り無しの結果の差につながっているのではないかと思いました。
 今回はパラフィンワックスの塊がすべて溶け終わるまでの時間を計測しましたが、ある特定の温度までの到達時間で比べた場合、フィンの有り無しでは、ここまでの差はなかったかもしれません。