LABORATORY熱の実験室


 ● 球の周りの風の流れ

 球が静止するには、外から加わる力がつりあっている必要があります。この場合、球が受ける力は重力以外には風から受ける力しかないので、もう少し球の周りの風の流れについて考えてみたいと思います。
(1) コアンダ効果

 空気の流れが球に当ると、球面に沿って空気が流れます。これをコアンダ効果と呼ばれています。 流れの曲率半径(曲がりの大きさ)は、外側に行くほど大きくなります。

(2) 流線曲率の定理

 このように球面に沿った流れは円運動をしているため、流れは向心力と見かけ上の遠心力が働きます。向心力は弱いので、遠心力で風は外側に向かって流れようとします。そのため、このように曲がった流れでは、曲がりの外側に行くほど圧力が高く、内側ほど圧力が低いことになります。これを、流線曲率の定理、といいます。

 ● 再びピンポン球

 上の2項を踏まえてこの場合に戻ります。

 今、球が少し左側に傾いたと仮定します。そうすると、図のように、球の左側の流れより、右側の流れの曲率半径の方が大きくなります。そのため、先ほど説明した流線曲率の定理より、球の左側の圧力が球左側より高くなり、球には右向きの力が加わります。その結果、球は右側に押し戻されます。
 同様に、右に傾くと左に押し戻されます。この繰り返しで、球は中央に留まり、球が落ちないのです。

 ● 考察

 先ほど「力がつりあっているので落ちない」と書きましたが、正確には、「バネや振り子のように、単振動を繰り返して中央に留まっている」といった方が良さそうです。
 ふらふらと動いている原因は、

 (1) 単振動によるもの
 (2) 風速に微量なばらつきがあること
 (3) 風速が時間で微量に変化すること

の3つの点だと思われます。

 ● 家庭でもできます

 ドライヤーでやってみても同じように浮かすことができました。(ただしほんの少ししか浮きませんが。) 興味のある方はやってみて下さい。ただし、ドライヤーの性能によっては浮かないかもしれません。その場合、ピンポン球より軽い球(発泡スチロールなど)があれば浮きます。
担当: 原

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