LABORATORY熱の実験室

熱の実験室-新館
第3回 熱電対電池を作ろう
新館は、4人の若手メンバーが交代で担当します
 2種類の異種の金属を接続し、温度差が生じると、温度差に比例した起電力が生じる、という効果があります。これはゼーベック効果と呼ばれています。この効果を発電モジュールとして使用することが可能です。
 また2種類の異種の金属を接続し、直流電流を流すと、ゼーベック効果の逆の現象が起きます。片方の接点が吸熱し(冷却される)、もう片方の接点は放熱します(加熱されます)。この効果はペルチェ効果と呼ばれており、冷却装置などに利用されています。
 この2つの効果は表裏一体の法則で、合わせて熱電効果と呼ばれています。熱電効果を利用し、冷却や発電を行うためのモジュールを、ペルチェ素子といいます。
実験実施: 2004年11月

 ● 実験内容

 今回の実験は、熱電対でペルチェ素子を作ります。
 熱電効果を利用したものの中で、一番身近(?)なものは熱電対です。熱電対は、ゼーベック効果により発生した起電力によって、温度を測定するものです。今回は、その起電力を利用して、熱電対で電池を作り、LEDを点けることに挑戦します。
 また、熱電対に電流を流し、ペルチェ効果のクーラーも作ってみたいと思います。

 ● 実験1 熱電対電池でLEDを点ける

実験準備

 熱電対の起電力はそれほど大きくありません。LEDは定格電圧が2V前後のものが多いので、熱電対電池の起電力も2Vを目指します。
 今回使用するJIS Kタイプ熱電対の起電力は、温度差1℃で約40μV(=4×10-5V)です。起電力を大きくするためには、
 1. 接点の温度差を大きくする。
 2. 熱電対を直列に何本もつなげる。
 3. ゼーベック係数の高い物を用いる。
 今回はJIS Kタイプ熱電対を使用する、と決めたので、1と2で対応します。温度差を500℃つけるとして、熱電対を100本直列につなげると、目標の2Vになります。
 ということで、熱電対電池の作成をしました。JIS Kタイプ熱電対(φ0.1)の素線を一本一本溶接でつなぎました。溶接箇所は200箇所です。
 このままでは接続部が接触してしまうため、低温側にする接続部にはシールを巻き、高温側にする接続部はロスナボード(耐熱ボード)に固定しました。
 次に、500℃の温度差をつけるために、簡単な炉を作成します。炉は、熱源にハイレックスヒーターを用い、耐熱レンガで囲んだ簡単なものです。
 
反射板付きハイレックスヒーター
 型番:HHS1210
 定格:単相200V 1kW

注意):
 これは、ハイレックスヒーターの正しい使い方ではありません。まねをしないでください。

実験開始

 それでは実験開始です。炉内の温度と、低温側周辺の温度、熱電対電池の起電力を測定していきました。


 炉内の温度の上昇と共に、起電力が上昇しているのが分かります。温度差は500℃を越え、起電力は2.2Vに達しています。しかし・・・
 点きません・・・炉内の温度は500℃を超え、起電力も2Vに達していますが、点く気配が全くありません。なぜでしょう?

LEDが点かない原因

 2Vになったのに点かなかった理由は、熱電対の抵抗の大きさにありました。内部抵抗r、起電力Eの電池に負荷抵抗Rをつなぐと、流れる電流Iは、
I=E/(r+R)
 負荷の両端の電圧E´は
E´=E・R/(r+R)
 になります。
 熱電対電池の抵抗を測定すると、370Ωもありました。LEDの抵抗値は電圧によって変化するため正確には求まりませんが、定格電圧2.1V、電流0.02Aの物なので、2V位だと約400Ωと考えます。
 これを上の式に代入しますと、電流も電圧も、約半分になってしまっていることが分かります。これではLEDは点灯しません。熱電対電池は、「容量が空の電池」だったようです。残念。

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