LABORATORY熱の実験室

3. 実験方法

金属ブロックの穴に保護管タイプ熱電対とシース熱電対を差し込みます。
丸端子取付タイプ熱電対をM4ネジで取り付けます。
表面温度測定熱電対キットを、付属のフッ素樹脂粘着テープで張り付けます。


差し込んだのとは別の、保護管タイプ熱電対とシース熱電対を、垂直に押し当てて固定します。
マグネット付熱電対を金属ブロック取り付けます。


各熱電対をデーターロガーに配線します。


金属ブロックをホットプレートDEMOの加熱面に置きます。
ホットプレートDEMOの制御用センサーは加熱プレートのほぼ中心の位置にあります。
ホットプレートの温度均一範囲は300㎜×300㎜となっており、この範囲内でしたら設定温度と表面温度はほぼ同じになります。

金属ブロックは温度均一範囲に収まるように乗せましたが、熱電対のスリーブ(熱電対と補償導線をつなぐ接続部分)の耐熱温度が90℃なので、スリーブが加熱プレートの上にならないように気をつけました。

200℃設定で通電を開始し、データーロガーで各熱電対の温度を記録します。


 

4. 実験結果

   
通電を開始してから約30分で各熱電対の測定温度はほぼ安定しました。
室温は26℃~29℃でした。
下記のグラフに各熱電対の測定温度変化を示します。




安定後の各熱電対の測定温度は、
  • 金属ブロックの穴に差し込んだ①保護管タイプ熱電対    :196.3℃
  • 金属ブロックの穴に差し込んだ②シース熱電対       :194.7℃
  • 金属ブロック表面に取り付けた③マグネット付熱電対    :192.3℃
  • 金属ブロック表面に取り付けた④丸端子取付タイプ熱電対  :191.3℃
  • 金属ブロック表面に取り付けた⑤表面温度測定熱電対キット :178.1℃
  • 金属ブロック表面に押し当てた⑥保護管タイプ熱電対    :124.8℃
  • 金属ブロック表面に押し当てた⑦シース熱電対       : 95.6℃
他の熱電対の測定温度がほぼ安定しても、表面温度測定熱電対キット、金属ブロック表面に押し当てたシース熱電対と
保護管タイプ熱電対の各測定温度は他より低くく、ふらつきました。

5. 考察

差し込んで使用した①保護管タイプ熱電対、②シース熱電対

金属ブロックは、ホットプレートDEMOからの熱伝導で加熱されますが、大気への輻射や対流による放熱もあるため、ホットプレートの制御温度より低くなります。

金属ブロックの穴に差し込んだシース熱電対と保護管タイプ熱電対それぞれの測定温度は194.7℃、196.3℃と近い温度でした。
この数値が金属ブロック内部の実温度に近いのかなと思われます。

③マグネット付熱電対、④丸端子取付タイプ熱電対、⑤表面温度測定熱電対キット

失敗したのが表面温度測定熱電対キットです。
熱電対自体の常用限度は200℃ですが、貼り付けに使用したフッ素樹脂粘着テープの耐熱温度が180℃だったのを見落としていました。
テープの耐熱温度を超えたため、テープと粘着剤が軟化して熱電対の感熱部が金属ブロックから浮いてしまい、測定値がふらついてしまったのだと思われます。

意外に良い測定値だったのは、丸端子取付タイプ熱電対で、191.3℃でした。
マグネット付熱電対の測定値も192.3℃だったので、両者の数値は金属ブロックの表面実温度に近いのではないかと思われます。
丸端子取付タイプ熱電対の感熱部は、下図のように通常電線をカシメる部分にあります。
丸端子の外径は8㎜、内径は4.5㎜ほどなので金属ブロックへの接触面積は約34mm2
M4ネジで固定していますので、より伝熱しやすく、また端子の材質が銅なので熱伝導も良いため、この数値になったと思います。

押し当てて使用した⑥保護管タイプ熱電対、⑦シース熱電対

やはりと言うか当然というか、金属ブロック表面に押し当てた保護管タイプ熱電対とシース熱電対の測定温度は
他の熱電対より低い数値となり、かなりふらつきました。
保護管タイプ熱電対の先端形状は半球形、シース熱電対の先端形状は円錐形。
いずれも点接触に近いので先端を押し当てて測定すると、接触面積が小さく、熱伝導が悪く、
正確な温度は測定できないということです。



保護管タイプ熱電対は接地形で、熱電対芯線が保護管と電気的、物理的に接触していますので、
芯線がシースと電気的、物理的に接触していないシース熱電対よりは測定値が高くなったのだろうと思われます。

     

6. 結論

  
保護管タイプ熱電対およびシース熱電対は、先端を物の表面に押し当てても、正確な温度は測れませんでした。

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