LABORATORY熱の実験室


 ● ヒーターの効果

 20リットルのお湯を、100Wのヒーターで加熱すると、ポリタンクからの放熱が全くなければ、1時間あたり4.3℃温度上昇する計算になります。実際には、前のページのように放熱がありますから、4.3℃は上昇しません。例として、サーファー用ポリタンクにヒーターを使用して、走行中の温度変化を計算すると、次のようになります。
  • お湯の温度50℃、気温20℃のとき(温度差:30℃)を考える
  • 走行時の、気温と湯温の差1℃あたりの1時間の温度低下: 0.07×1.2 = 0.084[℃]
  • ヒーターがない場合の1時間後の温度低下: 0.084×30 = 2.52[℃]
  • ヒーターを使用した場合の1時間後の温度上昇:4.3-2.52 = 1.78[℃]
 お湯の温度が上がっていくと、気温との差が大きくなって放熱量が増えていきますが、放熱量がヒーターのワット数と同じになると、それ以上温度が上がらなくなります。4.3/0.084 = 52[℃]の温度差で放熱量とヒーターのワット数が同じになる計算です。
 また、35℃で保温しようとする場合は、気温が20℃のときを考えると、ヒーターがない場合の1時間あたりの温度低下が15×0.084 = 1.26[℃]ですから、これと100Wのヒーターの1時間あたり4.3℃の比率から、(1.26/4.3)×100 = 29[W]で足りる計算になります。

 ● ヒーターが役に立つか

 100Wのヒーターでも、サーファー用ポリタンクのお湯の温度を上げられることがわかりましたが、その上昇はゆっくりです。気温20℃のとき、50℃のお湯を入れて海に向かうと、1時間経過ごとの温度は次のようになるはずです。
  はじめ 1時間後 2時間後 3時間後
ヒーターがある場合 50℃ 51.8℃ 53.4℃ 54.9℃
ヒーターがない場合 50℃ 47.5℃ 45.2℃ 43.1℃
 3時間走って海に着き、次にクルマの中に置いておくと、ヒーターOFFで次のように温度低下します。なお、このときの気温は15℃として計算しています。
  はじめ 1時間後 2時間後 3時間後 4時間後 5時間後 6時間後
ヒーターがあった場合 54.9℃ 52.1℃ 49.5℃ 47.1℃ 44.8℃ 42.8℃ 40.8℃
ヒーターがなかった場合 43.1℃ 41.1℃ 39.3℃ 37.6℃ 36.0℃ 34.5℃ 33.2℃
 ヒーターがなくても、4~6時間後に適温で、ヒーターで加熱してしまうと、温度が高すぎて9~11時間も経たないと適温まで下がりません。いくらなんでも、こんなに長い時間はサーフィンを続けられないと思います。はじめに35℃のお湯を入れると、3時間後に海に着いたとき、ヒーターがないときと同じ温度になりますが、特に低い温度のお湯を入れていくメリットは考えられません。
 シャワーをあびる時刻に合わせて、入れるお湯の温度を設定すれば、ヒーターは必要ないと思います。もっとも、私が考えた使い方と違っていて、役に立つこともあるかもしれませんが。
 実際に問題なのは、はじめの湯の温度が正確にわからず、シャワーを浴びる時刻もはっきりしないので、いざ浴びようとしたら冷たい、ということなんじゃないかと思います。でも、このときにヒーターで暖めたいと思っても、100Wのヒーターではゆっくりしか温度が上がらないので、間に合いません。

 ● エスハイの場合には

 エスハイの場合は、1500W使用できるAC100V電源があるので、シガーライターソケットのDC12V電源をヒーターに使う必要がなくて、右写真のポリタンク用ヒーターを使用することができます。
 型番: BCP2110
 定格: 100V1kW
 温度調節範囲: 30~80℃
 普通のポリタンクに合わせた形状なので、サーファー用ポリタンクには使用できませんが、今回の実験に使用した、DC12V100Wヒーターの10倍のワット数ですので、20℃の水でも、約20分で適温の35℃まで上げることができます。これなら、シャワーを浴びようとしたら冷めすぎていた、というときにも一応間に合うはずです。

 ● まとめ

 「温泉を配達します」で使った、200リットル入りポリタンクでもわかっていましたが、20リットルのポリタンクで実験しても、お湯はなかなか冷めにくいことがわかりました。
 サーファーの皆さん、シャワーを浴びるまでの時間に合わせて、適切な温度のお湯を入れていけば、十分適温のシャワーを浴びることができるはずです。それでも冷めすぎるようなら、発泡スチロールをタンクの下に敷いたり、更にタンクを囲めば、もっと冷めにくくなります。