【技術情報】カートリッジヒーターのガラスシール

ヒーターのシール材(封止材)

カートリッジヒーター、シーズヒーターなどの「金属管」のヒーターはほとんどの場合、絶縁体として酸化マグネシウム粉末が使われます。

酸化マグネシウムは融点、高温での絶縁性能、熱伝導率が高い、製造コストが安い、といった特徴がありますが、唯一の欠点として「吸湿」しやすいという性質があります。
乾燥状態では最低でも1000MΩ程度の高い絶縁性能がありますが、吸湿すると絶縁抵抗値が著しく低下し、梅雨時などの高湿度の環境では1MΩ以下まで落ち込むこともあります。(*乾燥させると絶縁性能は回復します)

そのため、酸化マグネシウムを絶縁材として使用する場合は通常シール材(封止材)を用いてヒーターを密閉します。
シーズヒーターのシール材には、エポキシ樹脂、シリコーンワニス、シリコーンゴム、ガラスなどが使用されます。

シール材の種類と特徴

シール材にはそれぞれメリット・デメリットがあり、すべての用途に対して万能なものはありません。使用環境に合わせて適切なものを選択する必要があります。

エポキシ樹脂:耐熱温度はあまり高くないため、水加熱用など、比較的低温用途で使用されます。シール性は比較的高いです。耐熱温度を超えて使用すると炭化し導電性を持つ場合があるため、注意が必要です。

シリコーンゴム:耐熱温度が高く、仮に耐熱温度を超えたとしても問題が起きにくいシール材です。シール性はあまり高くないので、梅雨時などは絶縁抵抗値が低下することがあります。ゴム状に固まるもののほか、パテ状で使用するもの、液状のまま使用するものなど用途に応じた様々なものがあります。

シリコーンワニス:硬化させた際に形状が残るシリコーンゴムと違い、溶剤などの成分が多く塗膜として機能します。薄膜のためシール性は限定的ですが、耐熱温度が高く、封止部の寸法が長くとれない場合などに広く採用されています。

ガラスシール:きちんと施工し、クラックが入らなければ完璧にシールができ、耐熱温度も高いです。
ガラスシールの欠点はクラックです。
ガラスは線膨張係数が金属より低く、引っ張り強度が弱いため、封止のためガラスを溶かし固める際に、パイプやターミナルとの膨張差(収縮速度と量の差)で引張力が生じ、クラックが入ることがあります。
また、機械振動などによりクラックが生じる可能性もあるため、注意が必要です。

カートリッジヒーターのシール材

 カートリッジヒーターは「コンパクトさ」と「長寿命」を優先した設計となっているため、しっかりとしたシール構造を設ける端末スペースがありません。標準仕様では薄膜のシリコーンワニスを採用しており、防湿効果は限定的です。
関連記事:ヒーターQ&A_ウルトラファイブの絶縁が低下した

カートリッジヒーターでしっかりとしたシール効果を得たい場合は、ガラスシールを使用するとカートリッジヒーターの特性を生かすことができます。

特注品:ガラスシールカートリッジヒーター
リンク先で紹介している製品のほかにも、HLタイプでは以下の仕様範囲で製作が可能です。
SUS304シース:φ8、φ9.42、φ10、φ12、φ14
NCF800シース:φ8、φ10、φ12

また、カートリッジヒーターの吸湿対策としては、ガラスシールのほかに以下の仕様も用意しています。

それぞれの特徴をまとめた比較表は以下の通りです。

カートリッジヒーターのシール構造の比較

スクロールできます
品名 / 仕様絶縁低下耐性耐熱性寸法価格 *4
通常品
(シリコーンワニス)
△◎
400℃以上*1
◎-
ガラスシール◎〇
端末250℃*2
○
場合により非発熱部の延長が必要
↑
端末部特殊仕様1/2
〇
△
端末180℃*2
△↑↑
ニューウルトラファイブ(高絶縁MgO)
*外観は通常品と同じ
〇〇
ヒーター400℃ *3
◎
通常品と同じ
↑
ハーメチック
◎◎
400℃*2
△
段付き部品が必要
↑↑↑

*1 ヒーターの使用可能温度まで使用できますが、200℃以上でシール性は徐々に失われます。
*2 端末部のみこの温度までの制限となります。ヒーター自体はもっと高い温度で使用可能です。
*3端末ではなく、ヒーター本体の使用温度が制限されます。
*4通常品に対する価格アップのめやすを↑の数で表しています。

ガラスシールの環境対応(RoHS指令)

 従来、ヒーター用をはじめとして電子部品の封止用ガラスには「鉛ガラス」が使用されてきました。
 2006年にEUで発令されたRoHS指令により「鉛」の使用が規制されたため、代替えとして鉛フリーガラスが登場しましたが、鉛フリーガラスは軟化温度が高く、封止時のひび割れ問題がより顕著になる、という課題があります。

 そのため、原則としてカートリッジヒーターのガラスシールは鉛ガラスとなりますが、ご要望に応じてガラスシールカートリッジヒーターのRoHS対応が可能ですので、ご相談ください。