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HOW TO USEHow to Use

How to Use シリコンラバーヒーターの温度

 シリコンラバーヒーターを使用したユーザーから、次のような苦情を受けることがあります。
  • 200℃で使おうとしたが、そこまで温度が上がらない。
  • 温度が上がり過ぎた。空焼きで200℃なのに、それ以上温度が上がるのはおかしい。
  • 断熱材を使ったら、温度が上がりすぎて断線した。
 標準ワット密度のシリコンラバーヒーターは、0.6W/cm2(100mm角のヒーターなら60W)で、これを無風の空気中に吊るして通電すると、約200℃になります。これは、200℃のときに放熱量(対流+放射)と発熱量が同じになるためです。
 シリコンラバーヒーターに限らず、ヒーターは一定の量の熱を出しますが、一定の温度になるものではありません。温度が一定なのは、例えば沸騰したお湯で加熱する場合で、100℃の一定の温度ですが、熱量は一定ではありません。

 ■ いろいろな使用方法とシリコンラバーヒーターの温度

 (1) 金属板ではさむと

 シリコンラバーヒーター表面のシリコーンゴムは、放射率が高いので、熱を赤外線として多く放射します。金属表面は放射率が小さいので、金属板ではさむと赤外線として放射する熱量が少なくなり、温度が上がります。
 下の表は、シリコーンラバーヒーターそのままのものと、ヒーターと同じ大きさのアルミ粘着テープを貼り付けて温度測定した結果です。
  ワット密度 [W/cm2]
0.3 0.4 0.5 0.6 0.8
シリコンラバーヒーターそのまま 128℃ 155℃ 178℃ 198℃ 237℃
アルミを片面に貼る 154℃ 188℃ 220℃ 246℃ 293℃
アルミを両面に貼る 218℃ 273℃ 328℃
 この結果から、対流による熱伝達率を7W/m2K として計算すると、シリコーンゴムの放射率:約 0.7、アルミの放射率:約 0.05 となります。他の金属でも、放射率はシリコーンゴムよりはるかに低いので、温度が高くなります。

 (2) 容器の水を加熱+断熱材

 水を入れた、丸型の金属容器にシリコンラバーヒーターを貼り付けて、表面温度を測定しました。断熱材を使用しない場合と、厚さ10mmのシリコーンスポンジを断熱材として外側に巻いた場合を比較しています。
ヒーター表面温度(水の温度)
ワット密度:0.6W/cm2
断熱材なし 119℃(98℃)
シリコーンスポンジ断熱材10mm 125℃(98℃)
 貼り付けたシリコンラバーヒーターから水への熱伝達が良いので、同じ沸騰寸前の水温(98℃)で、断熱材の有無でヒーター表面の温度は6℃しか違いません。

 (3) おがくずの加熱+断熱材

 (2)と同じ丸型の金属容器に、湿らせたおがくずを入れて、同じように加熱しました。例えば、生ゴミなどを加熱するときは、同じような状態になります。
 断熱材を使用したときの温度変化が下のグラフです。シリコンラバーヒーターのワット密度は0.6W/cm2です。
 容器内面に接しているおがくずに水分がある間は、水を加熱する場合とほとんど変わりません。水分が蒸発することで熱を奪うためです。ところが、水分がなくなってくると、急激に温度が上がり、300℃を超えてしまいます。乾燥したおがくずは断熱材と同じように熱伝導が悪いので、シリコンラバーヒーターは両面ともに断熱材に囲まれた状態になってしまうためです。
 断熱材を使用しない場合は、ヒーターの温度は180℃までしか上がりませんでした。
 なお、おがくずをカクハンすると、湿った部分、乾いた部分ができて、シリコンラバーヒーターの温度も場所により変わります。温度コントロールしていても、乾いた部分の温度が上がりすぎる状態になりますので、ヒーターのワット密度を低く設定する必要があります。

 (4) ヒーターが容器に密着していないと

 右の図のように、金属板などで、シリコンラバーヒーターを容器に固定するときに密着していないと、断熱材を使用していなくても、ヒーターの温度が上がってしまいます。
 ワット密度0.6W/cm2のヒーターで測定したところ、水温50℃のときに、シリコンラバーヒーターの温度は約270℃まで上がってしまいました。このときのヒーターは、2枚の反射板の間にある状態です。水への熱伝達が非常に悪くなっていて、外側も放射率が小さいアルミ板により放熱できなくなっています。

 ■ シリコンラバーヒーターをトラブルなく使用する

 同じワット密度のシリコンラバーヒーターでも、使用方法により温度は全く違ってきます。
  • シリコンラバーヒーターで、一定の温度にすることはできません。その温度になるために必要なワット数のヒーターを使用し、温度コントロールすることが必要です。
  • 断熱材の使用は、放熱ロスを少なくして電力削減できますが、ヒーターの温度をコントロールするか、試験を行なって使用時の温度を確認しておかないと、温度が上がりすぎて断線する可能性があります。使用条件によりますが、ワット密度は0.3Wcm2(標準の半分)くらいにするのが安全です。
  • 温度コントロールできない場合は、断熱材を使用しないのが安全です。
  • 加熱する物体に、シリコンラバーヒーターを完全に密着させることが重要です。