LABORATORY熱の実験室

結果

 温度測定した結果を以下に示します。ローラーが温度センサーに接触することで、測定温度が乱れるので、近似曲線を引きました。

熱の伝わる量の計算

 ワークに伝わる熱量は、ワークの温度とローラーの温度の差に依存します。ワークの温度が高くなればなるほど、放熱による熱損失が大きくなりますので、受けた熱量と熱損失のバランスがとれた時に昇温が止まります。また、初期はヒートローラーに溜まっている熱量がワークに流れるため、大きな熱の移動が起こりますが、それにともないローラー表面温度が低下しています。よって、伝わる熱量は時間経過と共に変化していくため、昇温の期間を区切って、「最大ワット数」と「平均ワット数」という値を定義して計算しました。

[最大ワット数]

 開始から、3秒間での熱の伝わる量を「最大ワット数」としました。短時間使用する時を想定したものです。例えば、試験1(アルミシートとシリコーンゴムライニング)のデータでは:
  • 3秒間隔で見たときに最大8.1℃の温度差が確認された。
  • アルミシートは、長方形15mm(ヒーター幅) × 30mm(全長) × 0.05mm(厚さ)のものを使用。
  • アルミの密度が2.7g/cm3、比熱が900J/kg℃
 よって、この時のアルミシートの温度上昇に必要な熱量は以下のようにして求めることができます。
Q[W] = ( 質量[kg] × 比熱[J/kg℃] × 上昇温度[℃] ) / 加熱時間[s]
( 60.75 × 10-3 × 900 × 8.1) / 3 = 148W
 アルミシートの加熱に、最大で148W出ていたことが分かります。

[平均ワット数]

 開始から60秒間での熱の伝わる量を「平均ワット数」としました。長時間使用することを想定しました。同じように試験1では:
  • 1分間で21.3℃の温度上昇が観測された。
  • アルミシートは上記と同様のものを使用した。
 よって、このときの温度上昇に必要な熱量は
( 60.75 × 10-3 × 900 × 21.3 ) / 60 = 19W
 となり、60秒の平均では19Wだったことが分かりました。
 ローラータイプとワークを変えた時、上の計算式と同様に、昇温中の最大ワット数と昇温中の平均ワット数を求めることができます。その結果を、下記の表でまとめました。
No. ワーク ローラー種類 期間
最大ワット数(3秒) 平均ワット数(60秒)
1 アルミシート シリコーンゴムライニング 148W 19W
2 アルミ製 149W 23W
3 シリコーンゴムシート シリコーンゴムライニング 148W 16W
4 アルミ製 254W 29W
表2:熱の伝わりの計算結果
※ 今回は出力を一定としたため、ローラーの表面温度は制御していません。シリコーンゴムライニングされたローラーは径が大きく放射率も大きいため、表面温度がアルミローラーより30~40℃低くなりました。