シリコーンゴムの表面温度は、0.5m、1m、2mの何れの測定においても遠赤外線ヒーターのほうが高く、空焼きヒーターのほうが低い結果となった。2種類のヒーターの比較において、熱放射による熱移動が遠赤外線ヒーターのほうが大きく、空焼きヒーターのほうが小さい為であり、4-1と同様に空焼きヒーターよりも遠赤外線ヒーターの放射率が高いことを裏付ける結果となった。
遠赤外線ヒーター、空焼きヒーターの双方ともにストーブとシリコーンゴムシートの距離が近いとシリコーンゴムシートの表面温度が高くなり、距離が遠いと表面温度が低い結果となった。表面が丸いヒーターの放射エネルギーは、距離が遠くなると拡散し、放射エネルギーの密度が低下することが確認できた。
八光電機遠赤外線ヒーター(ハイレックスヒーター)の放射率は、分光放射率測定により概知であり、その値は0.85である。一方、本試験に使用した空焼きヒーターの放射率は確認ができていない。そこで、本試験結果から空焼きヒーターの放射率を予想してみた。
シリコーンゴムシートの熱損失は熱伝達の損失と熱放射の損失の和である。すなわち、
Q
損 = Q
伝達 + Q
放射 ………………………………………………………(1)
ここで、Q
損はシリコーンゴムシートの熱損失[W]、Q
伝達はシリコーンゴムシートが熱伝達の手段で外界に伝えた熱量[W]、またQ
放射はシリコーンゴムシートが熱放射の手段で外界に伝えた熱量[W]である。
今回の場合シリコーンゴムシートの熱伝達は自然対流であるので、Q
伝達は式(2)で計算される。
Q
伝達 = S
1 × H ×〔T
1 - T
0〕……………………………………………(2)
S1:シリコーンゴムシートの面積[m2]
T1:シリコーンゴムシートの平均温度(絶対温度)[K]
T0:周囲温度(絶対温度)[K]
H:自然対流熱伝達率[W/m2・K]
ここでHは式(3)で計算した。なお、(3)の式は試験による経験式であり、簡易的に自然対流熱伝達率を求める式である。
H = 2.51 × C ×{〔T
1 - T
0〕/ L
1}
0.25 ……………………………(3)
L1:シリコーンゴムシートの高さ[m]
C:係数
係数Cは物体の形状、設置条件と関係がある。本試験の場合はその条件からC = 0.56として計算した。
一方、シリコーンゴムシートからの熱放射エネルギーQ
放射は式(4)で計算される。
Q
放射 = S
1 × σ × ε ×〔T
14 - T
04〕 ………………………………………(4)
σ:ステファンボルツマン定数 5.67 × 10-8 [W・m-2・K-4]
ε:放射率
次にシリコーンゴムシートが受けた熱量をQ′とすると、Q′はヒーターから放出された放射エネルギーであり、式(5)で計算される。
Q′ = α × S
2 × σ × ε ×〔T
24 - T
04〕 …………………………………(5)
α:放射密度係数
ヒーターの表面形状、反射板の影響、被加熱物への距離により、被加熱物の受ける放射エネルギーの密度が変わるため、この影響を放射密度係数として定義した。ヒーターや反射板形状が同じで、被加熱物までの距離が同じ場合、αは同じ値となる。
α = Q′ ÷ {S
2 × σ × ε ×〔T
24 - T
04〕} ………………………………(5)´
S2:ヒーターの表面積[m2] = 2 × π × R × L2
R:ヒーターの半径 = 6mm
L2:ヒーターの長さ(露出部分)= 0.746m
T2:ヒーターの表面温度(絶対温度)[K]
T0:周囲温度(絶対温度)[K]
安定時、ヒーターからシリコーンゴムシートが受けた熱量とシリコーンゴムシートの熱損失は一致するので、Q
損失 = Q′とする。
上述した(1)、(2)、(3)、(4)式でQ
損失を算出し、既知の遠赤外線ヒーターの放射率0.85と式(5)((5)´)によりαを算出して表3に示す。算出したαと空焼きヒーターの試験結果を使って、式(5)´により空焼きヒーターの放射率を算出することができる。計算結果を表4に示す。