LABORATORY熱の実験室

 

  3.2 Pの値を変更した場合の比較

 図3に条件2、条件3、条件4による200℃までの温度の推移をまとめました。
P [%] I [s] D [s]
条件2 3.4 228 57
条件3 1 228 57
条件4 10 228 57
図3 Pの値を変更した場合の比較
 
 Pの値を小さくした条件3では、+9 ℃オーバーシュートし、温度が収束するまで約700秒かかりました。条件2と比べ、オーバーシュートが大きくなったものの、温度が安定するまでの時間は短くなりました。
 Pの値を大きくした条件4では、+6 ℃オーバーシュートし、温度が収束するまで約1500秒かかりました。条件2と比べ、若干オーバーシュートが大きくなり、温度が安定するまでの時間が長くなってしまいました。

  3.3 Iの値を変更した場合の比較

 図4に条件2、条件5、条件6による200℃までの温度の推移をまとめました。
P [%] I [s] D [s]
条件2 3.4 228 57
条件5 3.4 50 57
条件6 3.4 450 57
図4 Iの値を変更した場合の比較
 
 Iの値を小さくした条件5では、+9 ℃オーバーシュートし、温度は収束しませんでした。条件2と比べるまでもなく、温度が収束しないので温度制御には適しません。
 Iの値を大きくした条件6では、+5 ℃オーバーシュートし、温度が収束するまで約1500秒かかりました。条件2と比べ、オーバーシュートの大きさは変わりませんでしたが、温度が安定するまでの時間が長くなってしまいました。

  3.4 Dの値を変更した場合の比較

 図5に条件2、条件7、条件8による200℃までの温度の推移をまとめました。
P [%] I [s] D [s]
条件2 3.4 228 57
条件7 3.4 228 30
条件8 3.4 228 120
図5 Dの値を変更した場合の比較
 
 Dの値を小さくした条件7では、+12 ℃オーバーシュートし、温度が収束するまで約1600秒かかりました。条件2と比べ、オーバーシュートが大きくなり、温度が安定するまでの時間が長くなってしまいました。
 Dの値を大きくした条件8では、オーバーシュートはせず、温度が収束するまで約1000秒かかりました。条件2と比べ、オーバーシュートは小さくなり、温度が安定するまでの時間が若干長くなりました。

  3.5 実験結果まとめ

 3.1-3.4の実験結果より、オートチューニングで求めたパラメーターを用いたPID制御より、短い時間で温度を収束させるにはPを小さくし、オーバーシュートを小さくするにはDを大きくすればよい方向性にあることが分かりました。これらの条件を合わせることで、短い時間で安定した温度制御が実現できるのではないかと考え、条件9としてPを小さくし、Dを大きくした場合で実験を行いました。
 図6に条件2、条件3、条件8、条件9による200℃までの温度の推移をまとめました。
P [%] I [s] D [s]
条件2 3.4 228 57
条件3 1 228 57
条件8 3.4 228 120
条件9 1 228 120
図6 Pの値を小さくし、Dの値を大きく変更した場合の比較
 
 Pの値を小さくし、Dの値を大きく変更した条件9ではオーバーシュートはせず、温度が収束するまで約850秒かかりました。条件2と比べ、オーバーシュートは小さくなり、温度が安定するまでの時間も若干短くなりました。
 以上の結果より、人の手による修正によりオートチューニングにより求めたパラメーターを用いたPID制御よりも、より短い時間で安定した温度制御を実現することができました。

 4. まとめ

 今回の実験により、ホットプレートDEMO (LS15P)の場合はオートチューニングにより求めたP、I、D、各パラメーターからPを小さく変更することで目標温度への収束が早くなり、Dを大きくすることでオーバーシュートを防ぐことができることが分かりました。
 目標温度への収束が早くなれば、作業時間が短くなり、仕事の能率の向上、消費電力の削減につながります。また、オーバーシュートを防ぐことは上限温度が決まっているワークを加熱する際には重要な事項です。今回の実験結果は安定した温度制御を短い時間で行う際の参考として有意義なものとなりました。しかし、本実験はホットプレートDEMO (LS15P)においての結果であり、加熱物の熱容量、ヒーターの消費電力、使用温度、その他さまざまな要因によって、最適なパラメーターは異なると推測されます。今後、ホットプレートDEMOの他の機種や、精密ホットプレートなどについても実験を行い、それぞれについて最適なパラメーターを検証していきたいと思います。

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