LABORATORY熱の実験室

熱の実験室-新館
第10回 氷の電気伝導
新館は、4人の若手メンバーが交代で担当します
 今回は、「水、氷は導体?絶縁体?」ということで、水や氷の抵抗値を測りました。

実験実施: 2006年12月

 木やプラスチック、ゴムは絶縁体と呼ばれ、電気を通しません。金属は電気を良く通します。この違いは、「体積抵抗率(電気抵抗率、抵抗率とも)」の違いで決まります。
 「体積抵抗率」とは、単位面積、単位長さあたりの抵抗値で、この値が大きいと絶縁体、小さいと導体、中くらいだと半導体と呼ばれます。
 絶縁体-半導体-導体の境目は、はっきりと決まっておらず、文献によっても若干異なります。手元にあった本によると、表1のような区分のようです。
導体 10-5 Ω・cm 程度
半導体 10-3 ~ 108 Ω・cm 程度
絶縁体 1010 Ω・cm 以上
表1
 「絶縁体」とは電気を通さないようなイメージですが、実は少しだけ電流が流れます。流れる電流は基本的にはオームの法則に従います。
 絶縁体は導体に比べると抵抗値が1015倍、百兆倍以上大きいので、同じ大きさなら流れる電流は金属の1/1015となるため、ほとんど電気が流れているように思えるのです。
 このように、絶縁体のような大きな抵抗値のことを、特別に「絶縁抵抗値」と呼びます。

 導電部に水は大敵だ、ということは、よく知られています。たいていの家電製品の説明書を見ると、コンセントはぬれた手で触らない、と書いてあります。これは、絶縁体が水でぬれると、表面に電気が流れやすくなり、感電の危険があるからです。

 また、たいていの絶縁体は、水を含むと体積抵抗値が急激に低下します。ヒーターの絶縁材に使われているMgOも、高熱に耐える大変優秀な絶縁物ですが、水だけには弱いのです

 ● 実験1 水の導電率

 このように、水は電気をよく流すことは分かるのですが、実際にどのくらいの体積抵抗があるのか、というのは分からなかったため、実験してみました。水の電気伝導度(体積抵抗率の逆数)を測る機器もあるのですが、会社には無いので、通常の抵抗計、絶縁抵抗計を使用しました。

使用した水
  1. 水道水
  2. 純水(イオン交換水)
  3. スポーツ飲料
 水の電気伝導では、イオンが電流の担い手ですから、水中に電解質の量が多ければ多いほど電流が多く流れるはずです。だから、
 2. 純水(イオン交換水) > 1. 水道水 > 3. スポーツ飲料
の順で体積抵抗値は大きいと思われます。特に、スポーツ飲料は、電解質がたくさん含まれているように書いてありますので、よく電気を流しそうです。

 プラスチックの容器に水を入れ、ふたにアルミの電極を取り付け、間の抵抗値を測りました。電極の大きさ、距離から、体積抵抗率を概算しました。
結果
  抵抗値 体積抵抗率
1. 水道水 1.3×104 Ω 5×103 Ω・cm
2. 純水 1.5×106 Ω 6×105 Ω・cm
3. スポーツ飲料 1.0×104 Ω 4×103 Ω・cm
水は半導体

 順位に関しては、予想通りの結果となりました。スポーツ飲料と、水ではそんなに大きな違いはありませんでした。
 表1の「絶縁体-半導体-導体の区分」で言えば、水は半導体ということになります。

  • 1
  • 2