LABORATORY熱の実験室

 ● 実験結果

 tc2(加熱される物体を想定)の温度を、条件が変化(逆さにする)しても60℃に安定制御するには、2点の測定値により、比例制御でどのように制御するのが良いか、やってみました。比例制御では、設定温度と安定する温度にズレが生じますが、(4)を除いて修正していません。

(1) tc1で制御

 80℃設定で、tc1(ヒーター中心の熱電対)の測定値により制御しました。途中から tc2が下がっているのは、逆さ(ヒーターが上)にしたためです。

duty: ヒーター出力(0% ~ 100%)、rt: 室温
 tc1があるヒーター部分は、正常に温度制御できています。tc2(加熱される物体を想定)は、前半66℃付近なのが、逆さにした後は、58℃程度まで下がっています。tc2の測定値を制御に使用していないので当然です。

(2) tc2 で制御

 60℃設定で、tc2(加熱される物体を想定した熱電対)の測定値により制御しました。
 はじめに、大きなオーバーシュートが生じています。tc2の温度が70℃を超えてしまいました。その後は上下を繰り返し、安定するのに時間がかかっています。tc2の温度変化が tc1から大きく遅れるためです。
 逆さにした後は tc1の温度が上がっていて、条件の変化には適応できています。

(3) tc1 とtc2 で制御-1

 はじめのオーバーシュートを緩和するため、tc1が90℃を超えたらヒーター出力が0%になるようにしました。
 tc1が90℃を超えて、出力0%になったのは、わずか20秒ほどですが、tc2はオーバーシュートで64℃までしか上がらず、大きな効果がありました。その後の上下変動も小さくなりました。

(4) tc1 とtc2 で制御-2

 tc2の測定値で制御すると、制御に対して温度変化が大きく遅れるために、上下変動は出てしまいます。そのため、前回のON-OFF制御で良好だった方法と同様、tc1(ヒーター中心)により制御し、tc2の温度が安定したら、設定温度(60℃)とtc2(加熱される物体を想定)の温度差により、tc1の設定温度を都度修正するようにしました。
 オーバーシュート・上下変動が小さいものの、tc2の動きが遅いです。tc1の温度がステップ状に変化しても、tc2の温度が変化するのに時間がかかっています。

(5) tc1 とtc2 で制御-3

 tc1は80℃、tc2は60℃を設定温度とし、それぞれの測定温度との差による、下の計算値により制御しました。
設定温度との差 [℃] = ( tc1設定値 - tc1測定値 ) × 0.3 + ( tc2設定値 - tc2測定値 ) × 0.7
 この方法は、プログラムもシンプルだし、(4)のような遅れがなく、かなり良好です。前半と、逆さにした後のtc2に少し差が出るのを補正することで、実用的な温度制御に使用できそうです。

 ● まとめ

 前回のON-OFF制御で良好だった方法と同じようなやり方の、(4)があまり良くなく、それなら単純に2点測定の値を合わせてみようとやった(5)が、かなり良好という結果になりました。
 通常の1点測定では、(1)または(2)しかできないので、(2)での温度変動が許容できない場合は、(1)で温度制御し、加熱される物体の温度が条件変化により変化するのを、手動で補正している場合もけっこうあるはずです。2点測定により制御の自由度が上がり、加熱処理のノウハウのようになっている部分を、合理化することが可能になると思います。そのとき、一般の温度調節器ではできない自由なプログラムによる制御が、Raspberry Piを使用すれば割と簡単にできます。

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