LABORATORY熱の実験室

 ● 3回目の実験

 容器の外面(側面・底面)からも、冷却されやすいようにした方が良い、という情報もありましたので、紙コップの底に逆V型のスペーサーを置き、外気の影響を受けやすく、凍結で底面が膨らむ影響は受けにくいようにしました。温度差は元に戻し、大きくしました。
 低温水:19℃、高温水:60℃

 実験全体の結果は、下のグラフの通りです。


 凍結開始のときの温度変化です。
 凍結開始は、低温水:42分、高温水:70分 でした。


 凍結完了のときの温度変化です。
 凍結完了は、低温水:297分、高温水:320分 でした。 


 3回目もムペンバ効果は確認されませんでした。凍結開始・完了ともに、高温水の方が明らかに遅くなっています。

 なお、低温水の氷が、右のようにおかしな形になりました。氷の中に閉じ込められた過冷却の水が、噴き出して凍結したのだろうと思われます。

 ● 考察

 実験前には、次のような現象が生じるとすれば、ムペンバ効果が確認できるかも? と思っていました。
  • 水の密度が4℃で最大になるので、低温水は4℃の水が底に閉じ込められて、上から凍結する。
  • 凍結すると対流がなく、熱が伝わりにくいので、全部凍結するのに時間がかかる。
  • 高温水は温度低下速度が大きいので、対流が激しく、安定して底に4℃の水をためることができない。
  • 閉じ込められた水の温度が低いので、低温水より早く凍結が完了する。
 実際にやってみると、凍結時に4℃の水が底にたまる状態は、低温水・高温水の全ての実験で確認され、違いは見られませんでした。
  1回目 2回目 3回目
低温水 高温水 低温水 高温水 低温水 高温水
a:初期水温 11℃ 62℃ 18℃ 42℃ 19℃ 60℃
b:凍結開始 33分 76分 56分 81分 42分 70分
c:凍結完了 320分 352分 419分 430分 297分 320分
d:凍結に要した時間 c-b 287分 276分 363分 349分 255分 250分
 凍結開始時間は、温度差が直接影響し、温度が高い方が先に凍ることは、今回の実験からは考えられません。凍結に要した時間は、高温水の方が3回の実験ともに、少し短くなっていますが、水の量・庫内温度などによる影響ではない、有意差なのかどうかは、もっと精度の良い実験を行なわないとわかりません。
 今回の実験で、ムペンバ効果を確認することはできませんでした。ただ、普通にお湯を凍らせれば水より早く氷になる、ということはありそうもない、ということは確認することができました。